フヅキの日記帳

腐女子が萌えを好き勝手語るブログです

芯の通った狂人と天狗の花嫁|「アンエクスペクテッド・ゲスト」感想

「アンエクスペクテッド・ゲスト」、終わりましたね。今はただ、「すごかった…」という溜息しか出ない。終盤怒涛の展開すぎてまだニューロンが疲弊してる。
私がこのエピを読んで感じ取ったテーマは以下の通りです。

  • 「偽物」と「本物」が混ざり合う場所としてのスガモ
  • たとえ出発点が嘘(偽物)であっても最後まで貫き通せば真実(本物)となる
  • 芯の通った狂人は強い
  • 「こうなりたい」「こうなりたくない」という二律背反の戦い


続きからネタバレ込みの感想です。



◆総評

ムカつくくらい見事な序破急構成!ほんとムカつくくらいボンモーの掌の上で踊らされた!まんまと引っかかったよバーカバーカ!!

序破急というのは物語の構成スタイルのことです。新劇エヴァの序破Qで知ってる人は多いかもしれない。
明治~大正の近代文学はだいたい序破急。「序」で延々と「これ何の意味あるん?」って感じにぐだぐだ登場人物の紹介とか導入とかして、読者が飽きてきたところに「破」でそれまでの展開をぶち破り、最高潮まで盛り上がったところを「急」でいきなり爆弾落として終わる、みたいな感じの構成。

私の好きな泉鏡花とかだいたいこれ。無駄に長くて読みにくい「序」の部分で8割くらい心折れそうになるけど、後半になって急に面白くなって興奮してたら、いきなり全部ぶったぎって終わるのでポカーンってするやつ。


今回のアンエクスペクテッド・ゲストはまさしくこの序破急だったんですよ。

正直言うと#5までは全っっっ然おもしろいと感じなくて、特に49課がカンゼンタイチャン(不完全)とチマチマ戦ってるとこなんて「このB級パニック映画どうやっておもしろくするの?」ってゲンナリしてた……
サイモンジさん出てきたあたりでやっと乗ってきて、でも一向にカンゼンタイチャン倒せる見込みないし、群像劇だから視点あっちこっち移動するし、セクション数だけは増えていくけど本筋なかなか進まないし、途中でほんやくチームが病魔に倒れるし、その後センジンが集中的に連載してこのエピの存在しばらく忘却の彼方にあったし、もうなんかいろいろと大変でしたね。

でもヤマヒロさんがピンクの光を見始めたあたりから加速度的に面白くなっていきましたね。たぶんこれが「破」だったのかもしれない。
そして「急」は……言わなくても分かると思いますが、ヤクザ天狗の登場。引っ張って引っ張ってこれですよ。終盤のカタルシスやばすぎ。まさしく最後に全部ヤクザ天狗が持って行った。

序盤のダラダラ感も、「破」の加速を経て「急」の爆発的興奮に至るまでの壮大な前フリだったのかもしれない。これが全部計算づくだったのならすごいと思う。踊らされて悔しい…悔しいけどすごく楽しい…

センジンと同時連載だったわけだけど、終わってみたらこっちのエピの方が遥かにインパクトありましたね。天狗が出てきたんだから当たり前か…
ニンジャ同士のイクサも好きですが、モータルが必死こいて生きるこういうエピも好き。満足度高かった。

以下、印象に残ったキャラクターごとに語ってます。



◆カンゼンタイチャンとコーゾさん

カンゼンタイチャンはカンゼンタイという名前でありながら、変体途上の不完全体であるという出落ち存在。ニンジャと呼んでいいのか憚られるほどのカイジュウっぷり。アイサツは一応彼(彼女?)なりにしていたつもりだったんだろうか…鳴き声としてしか認識できなかったけど…

カンゼンタイチャンが当初の予定通り運用されていたら、サブちゃんの元で思うままに暴れてそりゃあもうアビインフェルノジゴクだったでしょうね。自由に暴れるカンゼンタイチャンも見てみたかったな…

コーゾさん初登場時から「あっこの人めちゃくちゃ好きな感じだ…嫁候補…」と確信し、ちょくちょく出番があるたびに萌えてました。
私はコーゾさんがカンゼンタイチャンのこと「我が子」呼びした時点で、センジンのミコシ女史を思い出して「あっこいつそのうち暴走カンゼンタイチャンに踏み潰されてあっけなく死ぬな…」と思ってたんですけど、意外なことに最後までしっかり粘ってくれましたね。
そしてカンゼンタイチャンへの愛がすごかった。最後の最後まで我が子を愛し抜いていた。

ふたり同時にサヨナラって仲良しか!!!ハートフル家族愛か!!!というかカンゼンタイチャンふつうにサヨナラは言えるのな!?
この瞬間なんて、コーゾさんの台詞はなかったけど絶叫がびりびり伝わってくるようだったよ…
コーゾさん、カンゼンタイチャンと最後まで添い遂げられて本当によかったねえ…いいお父さんだった…

カンゼンタイチャンとコーゾさんの父子関係は、ロブスターとナカタ研究員を想起させます。
カンゼンタイチャンはこれまでのバイオニンジャすべてのミームが詰まった存在であるわけだが、ロブスター要素はハサミだけじゃなかった!そう!バイオニンジャと研究員の絆と愛情!たとえどれほどいびつなものであっても!


◆49課

なんかこのエピは49課が出てる時だけつまらなく感じてしまった。このエピの要はモータルだからかな?ニンジャ同士が派手にドンパチやらかすのはセンジンで堪能してたこともあって、このエピではニンジャの活躍が求められていなかったというのもある。

49課って無論モータルよりは強いけど、かといってアクシスとかに対抗できるほどは強くないし、ノボセ老に率いられたデッカーという肩書きがあって初めて輝ける人たちなんですよね。まあぶっちゃけカンゼンタイチャンを倒すためだけの舞台装置的な印象は拭えなかった。ナカジマが泣いたところはよかったけど。
49課が比較的善戦してたせいで、ラスボスポジションであるカンゼンタイチャンがそこまでヤバそうに思えなくて残念だったな…いや実際ヤバい存在だったのは確かなんですが…

あっでもノボセ老のこのシーンはめちゃくちゃよかった。
最近の忍殺は1ツイート140字に可能な限り詰め込む傾向にあるが、ここぞって時に短いセンテンスで決めてくる演出ずるい。鳥肌立ってしまうやろ!!


◆サイモンジさん

地下に幽閉されてる伝説級ハッカーって何そのファンタジー?って感じだけど、圧倒的物理タイプであっという間に戦況を変えちゃうサイモンジさんがかっこよすぎたので許す…なんだこのイケおじは…中二病ドリームをこれでもかと詰め込んだような人なのにただただかっこいい…

長年の投獄生活の末に自力で歩くこともままならず、視力は衰え、声帯も枯れ、浮浪者のようになりながらも、タイプ鍛錬だけは欠かさなかったサイモンジさん…口調(文字言語オンリーだけど)が紳士的なのもポイント高い。

「運んでくれるかね」とかあ!!「いいものがあるんだよ」とかあ!!!お茶目な紳士!!私の中でサイモンジさんのイメージは痩せ衰えた水谷豊です!!!右京さん!!!!!萌えないわけがないな!!!!
それでいて移動の際はおんぶ必須だからさ~~~~かわいすぎか……介護したい……
忍殺の高齢者はかっこいい人が多いので嬉しい。レース回のゲバタさんも美魔女だった。

エピの最後で脱走を果たしたこの伝説級ハッカーが、本筋に絡んでくることはあるんでしょうか。コトダマ空間絡みで再登場は十分有り得る。サイモンジさんのご活躍に期待してます。
……でも一緒に行動してるのジェイクだからろくでもない予感しかしない!!!サイモンジさん生きて!!!


◆ジェイク

最初の最初でジェイクが出てきた時点でもうこのエピの命運は決まったようなものだった。台風を起こすだけ起こして周りを散々な目に遭わせ、自分自身はその台風の中心にいるからいつも無事で済んじゃう男ラッキージェイク…
スガモにカンゼンタイチャンを引き寄せたのはジェイクの引力によるものだよ…

でも今回、ジェイク本人は至ってまとも、正気のままでしたね。相変わらず自動翻訳おかしいし獣姦趣味だと誤解されてたけど。
ジェイクって、ものや現象の境界を曖昧にさせる特性があるなと思います。クソ装置も、50%ブッダも、そしてカブセの医師としての立場も。ジェイクの周りではありとあらゆる境界が意味をなさなくなる。

しかし、ジェイクはひずみのきっかけを落とすだけで、彼自身は決定権をもたない。曖昧になったその「意味」を再定義できるのは当事者本人だけなのだ。シュレディンガーのブッダは自分の意志でブッダになったし、カブセもまた三千万円を蹴って高潔な医師のまま終わることを望んだ。

ジェイクが絡むエピは決まってトンチキ方向だけど、最後がなぜか感動的な流れになるのは、その最終的な選択に至るまでの間に物語があるからなんだなあ…ジェイクエピは神秘…


◆タロ

タロ!!!!タロはね、「変わらない」けど「成長する」キャラクターなんですよ!!
彼の根底にあるのは、「ぬるい」といって吐き捨てられそうな優しさ。愚かなまでにまっすぐで温かい優しさ。でもこのマッポーの世では何にも代えがたく尊い優しさ。
タロはその優しい心をもったまま、大切な家族のために自分自身を成長させることができる人間なんですよ。

だってさあ……あの日あの時跳べなかったタロがさあ……今は血の繋がらない「家族」のために、何の迷いもなく跳べたわけじゃん……優しい心はそのままに……

ニンジャはニンジャになった時から時間が止まってて、ある意味そこで完結してしまうわけじゃん……でもタロは人間だから、モータルだから、どこまで行っても終わりがない。無限に成長していける。ニンジャが越えられない壁を、その精神は軽々と跳び越えてしまえる。

タロは無力で愚かで優しいモータルだからこそ、ニンジャにはできないことを軽々とやってのけるからすごいのだ。
エド戦争でモータルがニンジャに勝ち、ニンジャがモータルに負けたのはそういうことなんですよ!!!!(どういうこと)


◆カブセ

カブセさんまじ英雄。(ヒデオではない)
このエピではいろんな「偽物・不完全」と「本物・完全」の対比が出てきたわけですが、カブセさんはその中でもすごく象徴的な存在でしたね。

薬物売買の仲介人で、小賢しくて、ケチ臭くて、最底辺たる刑務所の中でも全員から見下されてるヤブ医者が!!!!極限の状況下におかれて!!!!他人と自分を騙すための嘘を貫き通した結果!!!!何よりも真実に近い「本物」としてその人生を結実させてしまったんですよ!!!!!神話かな!?!?!?!?

「このクソ野郎は、三千万より、医者の名誉に目がくらんだ!」

本エピ屈指の名言ですね。この台詞見た時はほんと胸が震えた。生き延びた末に真実が露呈し、一生消えない罪悪感を引きずるよりも、今ここで潔く散り、人々の記憶の中で「高潔な医師」として在り続けることを望んだカブセさん…最後にソンケイを永遠のものとしたカブセさん…立派な勝ち逃げだよお…
彼がした処置なんてZBR注射だけだったのに、なぜあんなにもかっこよかったのか…カブセさんあなたは確かに高潔な医師だった!


◆ヤクザ天狗とヤマヒロ

さあやってきました。これを語らずしてこのエピは終われない。
タイトルが「思いがけぬ客」で、舞台にヤマヒロがいてタロがいて、役者揃った時点でもはやヤクザ天狗再登場不可避みたいなものだったし、いつ来るかも分からない天狗の気配に怯えながら連載を追う私の心境はヤマヒロさんとシンクロしていた。まあヤマヒロさんの恐怖はその遥か上を行っていたわけだが…

このエピは群像劇で、視点ごとに主役が代わっていく形式だったけど、ピンクの光がちらつくようになってからは完全にヤマヒロさんが主人公でしたね。物語上というより、読者の関心が。

あそこまで執拗に繰り返しオーディンを出す必要性とは…いや確かにヤマヒロさんを落とすにはあのプロセスは必要だったね、そうだね
なんかもう怯えきってるヤマヒロさんがかわいそうだった。笑っていいのか同情していいのか分からなかった。心身共に鍛え抜いたグレーターヤクザでも、天狗の恐怖の前では毛を狩られたアルパカも同然…ただ震えることしかできない…ヤマヒロさんはアルパカ…

そして狂気に抗うヤマヒロさんを見守りながら、私もまた「オラア!!!ヤクザ天狗こい!!!!」という気持ちと「アイエエ…ヤクザ天狗こないで…」という気持ちの間で揺れ動いていたのだった…読者までもこのエピのテーマ(二律背反)に巻き込んでしまうボンモーの筆力しゅごい…

結局ヤマヒロさんはヤクザ天狗を呼んでしまう。
それは、なすすべもなく狂気に呑まれたからではない。

幾度となく襲い来る幻影を拒み、狂気を拒み、必死で逃げた。しかし、彼は狂気から「逃げ続けた」結果、大切な「家族」を目の前でみすみす失ってしまった。
逃げるだけでは、運命に抗う力は得られない。
ヤマヒロさんは自らの運命にケリを付けるためにヤクザ天狗の狂気を受け入れたのです!!!(フジオかな?)

もうまじこのあたり読んでで冷や汗と動悸がヤバかった。なんか読者である自分まで天狗の国に連れて行かれるのではないかという恐怖があった。ヤクザ天狗こわ…帰ッパ…

まあここまで来ても私はヤクザ天狗の登場を疑っていた。たぶんこれ実際は電話繋がってなくて、ジョジョ5部のドッピオとボスみたくエア会話してるだけだと思ってた。とおるるるるるるるる。

エピ読み終わった後でも、この時の電話は本当に繋がっていたのかどうかはまだ明らかじゃないっていう…天狗適性に目覚めたヤマヒロさんがコトダマ空間で超自然会話してただけかもしれない…

しかしヤクザ天狗は来た。午後8時9分3秒に。そしてヤマヒロさんとタロを再び救ってくれたのだ。
なんでこの狙いすましたタイミングで来ちゃうんだよ!!!!!でも893なら仕方ない!!!獣の数字なら仕方ない!!!!召喚呪文が刻まれちゃったなら仕方ない!!!!

私はつくづく「893=獣の数字」っていうネタに弱いと思う。なんでそんな大層なキリスト教ネーミングしちゃうんだよ…無駄にかっこいいだろヤクザなのに…意味わかんない…

冷静になって考えると、ヤクザ天狗さんはロンゲストデイの一部始終はご存知だったんでしょう。無線とか傍受できるし。
そして電話を受け、ヤクザ天狗が見参するタイミングを今か今かと待ち構えていたわけでしょう。そして893。獣の数字。そりゃあこのタイミングで行くしかないよね。

来るぞ来るぞとは思ってたけどやっぱり完璧には覚悟できてなかったらしい。私はものすごく興奮したし震えた。深夜2時なのに!次の日普通に仕事あるのに!!!!(後悔はしてない)

カンゼンタイチャンを追い込んでタケウチ食らわせたのは49課はじめデッカーの皆様のご尽力の賜物なのですが、
ヤクザ天狗は空を舞って聖水降りまいただけなのですが、
カンゼンタイチャン滅ぼしたのは全部ヤクザ天狗の手柄みたいになってるのはどうしてなんでしょうねえ……

まあ……天狗だし……???(思考放棄)

ヤクザ天狗さん何さらっとヤマヒロさんの肩抱いてんだよ意味わかんない……
この問答どう足掻いても結婚の宣誓にしか見えないよ……「誓いますか?」「誓います」だろこれ……なんだこれ……

「己の運命を受け入れた真なるヤクザの顔」って字面だけ見るとやたらとかっこいいのに!天狗の国に連れていかれる人の描写だと分かると恐怖しかない!!!なんだこれ!!!
あと元凶は他でもない自分のくせになんでお前が泣くんだヤクザ天狗さん!!おかしいだろ!!!なんだこれ!!!!

もうほんとこのくだり意味わかんないんですけど、ヤマヒロさんが嫁入りしたことだけは理解した。天狗の花嫁だ。おめでとう。…………おめでとう?(困惑)
今後マジでヤマヒロさんがニンジャハントに加わったらどうしよう…天狗じゃなくて象さんのお面被ってきたらどうしよう…おめでとうって言えばいいのか…そうか…お幸せにね…



でもこうして見ると、10月10日を通して確実に「世代交代」が行われているんだなって感じがする。
レイジやユンコチャン、ショゴヤモ、アズール、そしてヤマヒロさん。
彼等は彼等の父母であり兄弟であり師であり友である人々のミームを受け継ぎ、未来へと繋いでいく役割がある。ニンジャスレイヤーという物語は着実に終わりへと近付いてるのかもしれません。
ぶっちゃけこの並びにヤマヒロさん入れるとすごい浮きまくるけど後継者の選定基準は天狗の趣味だから仕方ない、仕方ないのだ。